社長連載記事 #1
社長の経歴
人生を大きく変えた出来事
1990年、兵庫県に生まれた石井は、小学3年生の頃からすでに「稼ぐ」ということに人一倍敏感だった。大学受験に合格後、17歳で株式会社オープンハウスにアルバイトとして飛び込み、不動産業界の厳しさと面白さに触れる。20歳になると、同社ディベロップメント部門に移り、戸建て用地の仕入れを学ぶようになった。
その後、不動産業界の大手法人部の間で有名な池袋の岩波建設に入社。ここで都心の大型ビルや収益物件の仕入れを一から叩き込まれる。
岩波建設の古川社長との出会いは、石井の人生を大きく変える出来事だった。大学4年の3月、それまで「自分が認めた人、尊敬する人のもとでしか働きたくない」という想いから一切就職活動をしていなかった彼は、オープンハウス・ディベロップメント柏田会長からの勧めで岩波建設の門を叩いた。社長との面接では「オーラに圧倒され、これまで出会った中で一番凄い、別格の人だ」と直感。「岩波建設に入りたい」とその場で決意し、社長から「いつから来れる?」と問われ、「明日から行けます」と即答。言葉通り、その翌日から社会人として働き始め、人生が180度変わるきっかけとなった。
「千に一つ」を拾う執念
24歳でオープンハウスに再入社した石井は、収益不動産の仕入れで圧倒的な成果を出す。それもそのはず。ストライクゾーンが無いほどに仕入れ基準が厳格だった岩波建設で鍛えられた目利き力は、当時のオープンハウスではほとんどがストライクゾーンになった。
1〜25億円規模の 案件を扱い、わずか1年7か月で70件以上を成約。売上185億円、粗利35億円という驚異的な数字を叩き出し、同社史上初の「殿堂入り社員」として表彰された。25歳のときには年収2,560万円に到達し、社内でも異端の存在となった。
ちなみに、不動産営業には「千三つ(千件の中から三件取れる)」という言葉がある。だが石井は「PRESIは千に一つの案件を扱う」と言い切る。無数の候補から誰も見つけられない物件を拾い上げ、育て上げ、売却する。物件は子どものような存在で、手放すときは嬉しさと寂しさが入り混じる。「娘を嫁に出す感覚」と表現するほど愛着を持つ。それだけ必死に向き合ったからこそ、成果が出たときの喜びは大きく、だからこそ彼は「営業という仕事は、旅に似ている」と語る。
独立と創業——25歳の決断
オープンハウスでの順調さの裏で、石井は違和感を抱いていた。
「年収や地位が上がるほど、反比例するように人間性が悪くなっていました。」周囲への感謝を忘れ、会社を自分だけで回していると勘違いしていたのだ。
「自分ひとりで会社を回していると思っていたけれど、実際は事務の人や周囲の助けがあって成り立っていた。そう気づいたとき、自分で全ての苦労をしないと分からないなと思いました。」
折しもヘッドハンティングの話もあり「年収1億円以上」の条件を提示されたが、石井の決断を後押ししたのは金額そのものではなかった。
ある方から「“周りの準備は整っているのに、足りないのはあなた自身の覚悟です”と言われ、胸を突かれました。その場で腹を括り、すぐに会社に“今ある物件をすべて売り切ったら辞めます”と伝えに行きました。」
こうして石井はオープンハウスを退社し、2016年、25歳で株式会社PRESIを設立。初年度売上は16.2億円、翌年は43億円、3年目には48億円と急成長を遂げた。
しかし、順風満帆とはいかなかった。2018年、業界を揺るがす大事件が起きた。シェアハウス投資を巡る「かぼちゃの馬車事件」だ。サブリース契約の破綻が全国に波及し、多くの投資家が被害を受けた。PRESIは一切関与していなかったが、金融機関の融資姿勢が一気に厳格化し、アパート事業を止めざるを得なくなった。追い風のときに集まった人材の多くが離れていき、28歳から数年間は苦しい時期が続いた。
それでも石井は「向かい風」に耐え、次の攻めに向けて投資を続けた。これまで7社に計13億円以上を投資しており、来年から数年以内に相当なリターンが見込まれている。まさに今、さらなる飛躍の土台が完成しつつある。
仕事と人生に対する考え
石井のモットーは「人生は仕事のためにあるのではなく、仕事は人生を豊かにするためにある」というものだ。
25歳で年収2,560万円を得て「お金や地位だけでは幸せになれない」と気づき、そこから「世の為、人の為になることしかやらない」と決めた。
「PRESIが儲かるからやるのではなく、クライアントにとってプラスになるなら喜んで売り買いするということを判断基準にしています。」
その余裕は、自らが13億円を投資して築いてきたものだ。「焦って事業を進めると判断を誤り、取引先や社員に迷惑をかける。だからこそ最大限のリスクを自分が背負います。」と語る。
「信じてよかった」と言われるために
石井が社員に求めるのは、スキルや結果以上に「人として正しい判断ができるかどうか」だ。
「一部の政治家のように嘘やごまかしで立ち回る人間ではなく、義理人情に厚く、弱い人を助けられる人であってほしい」と強調する。そして続けてこうも語った。
「最終的に、社員から“PRESIに入ってよかった”、“石井を信じてよかった”と思ってもらえること。それが私にとって一番の喜びです。」
挑戦を続けるベンチャーでありながら、社員一人ひとりの人生を豊かにする舞台を整える。その姿勢は、石井の経歴を貫く不変のテーマであり、これからのPRESIの未来を形づくる原点でもある。